平成23年3月:東北大震災に際して、NPO法人「ジャパン・ハート」に現地の医療活動を支援するため寄付を行ないました。
平成23年8月:タクシン会長(タイ王国元首相)が訪日し、東北震災地を訪問し、震災地復興支援を表明しました。東京では各方面のリーダーと面談し、日本とタイの今後の民間協力について協議し、講演しました。その講演録の一部を紹介します。
「今、世界中を見渡しますと、経済の面でも、政治の面でもさまざまな興味深いことが起きています。北アフリカ、中東では、すでにチュニジアの権力者が崩壊、その波がエジプト、リビアに押し寄せ、シリアも権力側がかなり追いつめられた状態になっています。こうした状況を見るにつけ、いかなる政府も自国民のことを第一に考えなければ駄目だということがよく分かると思います。
一国の政府は自国民のことを気にかけることを最優先にしなければなりません。これは、民間企業が顧客のことを第一に考えることとまったく同じことです。つまり、モノを一方的に作って、作ったから買ってくださいということで済む世の中ではないということです。顧客側がどういう要望を持っているのか、どういった価格なら製品を買ってもらえるのか、まず顧客側の声を集めることが重要だと思っています。政治の世界もまったく同じで、まず国民のニーズを必ず十分把握しなければなりませんし、国民に奉仕するという態度がなくてはなりません。
現在、世界経済を見渡したところ、とても面白い現象が見受けられます。2008年に発生したアメリカ発の金融危機(リーマンショック)、EUで起きている債務危機、さらに一次産品、特に石炭価格もこのところ高騰し、通貨・為替の方でもかなりの変動が見られます。
また、アジアの2大国、中国とインドの台頭もまた、著しいものになっています。特に中国の台頭は目覚しく、外貨準備高も非常に多くなっていますし、それに連れてアメリカ国債の保有高を増やしています。また現在、中国政府は熱心に海外でいろいろな資産とか、物件を買収しつつあります。資産の中身を強化しようとしているわけです。
日本政府も外貨準備高を非常に積み上げている点では中国と同じですが、日本政府は多大な債券を発行し、債務高が増えていることも事実です。今のところ、日本の国債は国内で消化されており、あまり問題になっていませんね。
日タイ間で規模的に大きな違いがあるのですが、類似性も大いにあると思っています。日本とタイは輸出主導で成長してきたというのが類似点です。輸出依存度が高いということは、大きな共通要因かと思っていますが、ただ国内経済では、タイの方はまだまだやるべきことが多く残っています。国民を強化する、企業を強化するという面で、さらに国内経済を強くできればと考えております。
銀行の状況も日本とタイの間は似たり寄ったりの状態かと思っています。双方の銀行に流動性は十分あると思いますが、このごろ貸し渋りの風潮も見られます。つまり、銀行側もあまりローンを出したくないという感じです。なぜなら、不良債権化するのが怖いということでしょう。
卵が先か鶏が先かというのは、経済発展でよく言われることですが、銀行部門はまず、経済が繁栄、成長してもらってからローンを出しましょうと考えています。ところが、経済の方は、銀行がローンを出してくれないと成長できないわけで、これはまさに卵が先か鶏が先かという状況そのものだと思っています。
政府がある程度イニシアチブを取って、国民、民間部門がもっと資本に対してアクセスできるよう、いろいろな形態でローンが提供できるシステムを作るべきできであると思っています。たとえば、政府が後押しする形でローンが出るよう促して、国有銀行がローンの供給に一枚かむという流れになってくると、民間銀行も手を拱いているわけにはいかなくなります。やはり自らも動かないといけないと感じることで、すべてがうまくいくようになると思います。それで経済が回るということになるのでしょう。(中略)
人々は段々とお金の余裕ができるようなると、その金を消費に回すわけですが、その中でぜひ日本製品を買いたいと人々が思うようになったのです。川崎、いずず、ソニー、トヨタなどの製品を是非自分のものにしたいと思うようになりました。日本製品を自分のものにしたいと思う人は、タイに限らずASEAN諸国に中にはたくさんいます。なぜこのようなことを長々と話しているのかと言うと、日本もタイも、ぜひこのEPAのもとで繁栄をしていただきたいと強く願っていることを強調したいからです。
FCCJ(外国人特派員協会)の記者会見でも申し上げたのですが、いろいろな分野で日本とタイは本格的に提携関係を結ぶことができると思っております。例えば、日本はエレクトロニクス、自動車関連産業が得意であり、世界のリーダー的存在であるわけですが、それでもエレクトロニクスの分野では韓国企業の追い上げがきついと思います。また自動車部門においても、日本は中国からの追い上げに直面しております。このごろ、中国は発展への近道ということで欧州系の自動車の買収を重ねているようです。
翻って、タイは自動車産業については、幅の広い裾野産業を持っています。そして、タイで生産されている自動車には、現地調達率、ローカルコンテンツ率は高いのです。たとえば、BMWは65%とか、1トンのトラックでも85-87%とか。現地調達率が高いということで、かつタイの人はスキルの度合いが高いですから、生産する車の質もその分非常に優秀なものになるのです。ブランドを問わず質の高い車をタイ国内で生産することができています。これを土台にして、ソフトを含めて技術移転がうまく運べたらいいと思っています。今日も、実はトヨタにソフトを納めている日本の中小企業の方にお会いしたのですが、今後もタイの地をご活用いただき、さらに自動車を生産していただけたら、企業側も、多少コストが増えたとしても、競争力は十分維持できるものと考えております。
もう一つ日本とタイの間で協調できるのは中小企業の分野ではないかと思っています。日本の中小企業というのはとても先端的であり、かつ質が高いということで協調できると思っています。日本の中小企業の方には、ぜひタイに進出していただき、タイを生産拠点として、そこからASEAN諸国にモノを出すということは十分考えられる、展開可能なことと思っています。また、長所、短所双方をひっくるめて見ても、日本とタイとではかなり共通通部分があるのではないかと思います。(後略)
今、世界中を見渡しますと、経済の面でも、政治の面でもさまざまな興味深いことが起きています。北アフリカ、中東では、すでにチュニジアの権力者が崩壊、その波がエジプト、リビアに押し寄せ、シリアも権力側がかなり追いつめられた状態になっています。こうした状況を見るにつけ、いかなる政府も自国民のことを第一に考えなければ駄目だということがよく分かると思います。
一国の政府は自国民のことを気にかけることを最優先にしなければなりません。これは、民間企業が顧客のことを第一に考えることとまったく同じことです。つまり、モノを一方的に作って、作ったから買ってくださいということで済む世の中ではないということです。顧客側がどういう要望を持っているのか、どういった価格なら製品を買ってもらえるのか、まず顧客側の声を集めることが重要だと思っています。政治の世界もまったく同じで、まず国民のニーズを必ず十分把握しなければなりませんし、国民に奉仕するという態度がなくてはなりません。
現在、世界経済を見渡したところ、とても面白い現象が見受けられます。2008年に発生したアメリカ発の金融危機(リーマンショック)、EUで起きている債務危機、さらに一次産品、特に石炭価格もこのところ高騰し、通貨・為替の方でもかなりの変動が見られます。
また、アジアの2大国、中国とインドの台頭もまた、著しいものになっています。特に中国の台頭は目覚しく、外貨準備高も非常に多くなっていますし、それに連れてアメリカ国債の保有高を増やしています。また現在、中国政府は熱心に海外でいろいろな資産とか、物件を買収しつつあります。資産の中身を強化しようとしているわけです。
日本政府も外貨準備高を非常に積み上げている点では中国と同じですが、日本政府は多大な債券を発行し、債務高が増えていることも事実です。今のところ、日本の国債は国内で消化されており、あまり問題になっていませんね。
日タイ間で規模的に大きな違いがあるのですが、類似性も大いにあると思っています。日本とタイは輸出主導で成長してきたというのが類似点です。輸出依存度が高いということは、大きな共通要因かと思っていますが、ただ国内経済では、タイの方はまだまだやるべきことが多く残っています。国民を強化する、企業を強化するという面で、さらに国内経済を強くできればと考えております。
銀行の状況も日本とタイの間は似たり寄ったりの状態かと思っています。双方の銀行に流動性は十分あると思いますが、このごろ貸し渋りの風潮も見られます。つまり、銀行側もあまりローンを出したくないという感じです。なぜなら、不良債権化するのが怖いということでしょう。
卵が先か鶏が先かというのは、経済発展でよく言われることですが、銀行部門はまず、経済が繁栄、成長してもらってからローンを出しましょうと考えています。ところが、経済の方は、銀行がローンを出してくれないと成長できないわけで、これはまさに卵が先か鶏が先かという状況そのものだと思っています。
政府がある程度イニシアチブを取って、国民、民間部門がもっと資本に対してアクセスできるよう、いろいろな形態でローンが提供できるシステムを作るべきできであると思っています。たとえば、政府が後押しする形でローンが出るよう促して、国有銀行がローンの供給に一枚かむという流れになってくると、民間銀行も手を拱いているわけにはいかなくなります。やはり自らも動かないといけないと感じることで、すべてがうまくいくようになると思います。それで経済が回るということになるのでしょう。(中略)
人々は段々とお金の余裕ができるようなると、その金を消費に回すわけですが、その中でぜひ日本製品を買いたいと人々が思うようになったのです。川崎、いずず、ソニー、トヨタなどの製品を是非自分のものにしたいと思うようになりました。日本製品を自分のものにしたいと思う人は、タイに限らずASEAN諸国に中にはたくさんいます。なぜこのようなことを長々と話しているのかと言うと、日本もタイも、ぜひこのEPAのもとで繁栄をしていただきたいと強く願っていることを強調したいからです。
FCCJ(外国人特派員協会)の記者会見でも申し上げたのですが、いろいろな分野で日本とタイは本格的に提携関係を結ぶことができると思っております。例えば、日本はエレクトロニクス、自動車関連産業が得意であり、世界のリーダー的存在であるわけですが、それでもエレクトロニクスの分野では韓国企業の追い上げがきついと思います。また自動車部門においても、日本は中国からの追い上げに直面しております。このごろ、中国は発展への近道ということで欧州系の自動車の買収を重ねているようです。
翻って、タイは自動車産業については、幅の広い裾野産業を持っています。そして、タイで生産されている自動車には、現地調達率、ローカルコンテンツ率は高いのです。たとえば、BMWは65%とか、1トンのトラックでも85-87%とか。現地調達率が高いということで、かつタイの人はスキルの度合いが高いですから、生産する車の質もその分非常に優秀なものになるのです。ブランドを問わず質の高い車をタイ国内で生産することができています。これを土台にして、ソフトを含めて技術移転がうまく運べたらいいと思っています。今日も、実はトヨタにソフトを納めている日本の中小企業の方にお会いしたのですが、今後もタイの地をご活用いただき、さらに自動車を生産していただけたら、企業側も、多少コストが増えたとしても、競争力は十分維持できるものと考えております。
もう一つ日本とタイの間で協調できるのは中小企業の分野ではないかと思っています。日本の中小企業というのはとても先端的であり、かつ質が高いということで協調できると思っています。日本の中小企業の方には、ぜひタイに進出していただき、タイを生産拠点として、そこからASEAN諸国にモノを出すということは十分考えられる、展開可能なことと思っています。また、長所、短所双方をひっくるめて見ても、日本とタイとではかなり共通通部分があるのではないかと思います。(後略)」
平成25年1月:日本とタイの経済連携を促進するためにタクシン会長が来日し、日本タイ経済連携促進機構(JTEPPO)主催のフォーラム(ホテル ニューオータニ)において基調講演を行ない、日本の各界のリーダーとアジアのあるべき姿に関して意見交換を行ないました。またNHKのインタビューでは含蓄あるメッセージを発しています。